ABSへのラッカー系塗料による塗装はパーツの破損を引き起こすと言われています。 しかし、その原因と対策についてはプラモデルメーカー・プロモデラーでも見解が異なっています。
このページでは、各プラモデルメーカー・プロモデラーのABSパーツへの塗装の見解をまとめたものです。
※ 以下の調査はすべて2023/01/22時点での結果をもとにしています。 もしかしたら後ほど情報がアップデートされているかもしれませんのでその点はご注意ください。
このページでの並び順について
このページでは各企業・個人の意見を信頼性が高いであろう順に見ていきます。
1. プラモデルメーカー
プラモデルメーカーはプラモデルを製品として世の中に送り出しており、関係者の中で最も責任が思いと言えます。間違った説明をするとクレーム・悪評・製品回収などのリスクがあります。必然、彼らの発信は社名がかかったものになり、かなり信頼できます。
タミヤ
公式な説明はウェブ上では見つかりませんでした。
Youtube上では【筆塗り編】タミヤ 基礎からのプラモデル講座[解説:プロモデラー 長谷川伸二] - YouTubeが見つかりましたが、塗料の説明でもABSとの組み合わせについては言及ありませんでした。
タミヤがラッカー系塗料を出したのは2017年と同社の歴史では比較的最近です。一般には、毒性が強く扱いの難しいラッカー系は長年タミヤは推奨していなかったと認識されています。説明がまだないのはそういったことも関係しているかもしれません。
バンダイ
公式に説明しているページが2つ見つかっています。ただ、この2ページはかなり注意深く探さないと見つかりませんでした。あまり存在を知られていないでしょう。
■ラッカー系塗料 ラッカー系塗料はABS樹脂が割れる場合がありますので注意してください。 ※サーフェイサーはラッカー系塗料です。ABS樹脂が割れる場合がありますので注意してください。
■溶剤 エナメル溶剤やラッカー溶剤、アルコール系溶剤を使用する塗料は、ABS樹脂を破損する恐れがあります。
ABSは通常のラッカー系といわれる塗料の場合「薬剤性劣化(樹脂が塗料の用材に侵され劣化すること=樹脂がもろくなること)」を起こす恐れがあります。塗装の際は安全な水性カラーをお勧めします。
Posted by SC代理人 at 2006年10月11日
コトブキヤ
公式に説明しているページが1つ見つかっています。
このページは、2023/01/22時点でabs ラッカー - Google 検索の検索順位2位であり、よく参照されています。これはコトブキヤがABSを多用したプラモデルを発売しているためかもしれません。
ABSパーツの塗装が推奨されない理由
ABSパーツを塗装すると、塗料に含まれる溶剤(薄め液)がパーツの樹脂内に浸透し揮発すると、浸透部分が小さなヒビとなってパーツがもろくなります。
組み立て時や組み立て後、パーツ同士の接合部や関節部分などの浸透部分に負荷がかかると破損が起こります。これがABSパーツの塗装が推奨されない理由です。
組み立て時の注意点
パーツ同士の「合い」を調整する
パーツをはめ込むときの「かみ合わせ」がきつすぎるとパーツへの負荷が大きくなり、塗装後の組み立て時に破損の危険が高まります。そのためピンを削るなどしてパーツ同士の「合い」を事前に調整しておきます。
可動するパーツを分解しておく
可動するパーツは出来るだけ分解した状態で塗装を行い、最後に組み立てるようにしましょう。関節などの可動機構は勘合によって強度を確保・調節しており、負荷のかかった状態で塗装をすると破損の可能性が高まります。
塗料取り扱い時の注意点
1度に大量の塗料を乗せない
大量の塗料を乗せると乾燥まで時間がかかり、それだけパーツの表面に溶剤に触れる時間が長くなる為、溶剤が浸透しやすくなります。少しずつ表面に塗料を乗せていき、塗膜が乾燥してから塗り重ねるという方法で発色させていきます。
塗料を薄めすぎない
塗料はのびを良くするために溶剤(薄め液)で希釈して使用しますが、極端に薄めすぎると、パーツが溶剤(薄め液)に直接さらされることになるため、破損の危険性が高くなります。しかし濃すぎても上手く塗装が出来ない為、適度な濃度になるよう注意して希釈を行います。
STEP2)下地塗料吹きつけ
溶剤の浸透を防ぐため、まずは下地塗料(市販の模型用サーフェイサー等)を使用し保護膜を作ります。
ボークス
公式な説明はウェブ上では見つかりませんでした。 しかし、製品説明の一部にABS + ラッカーの言及があります。
69991 ファレホメカカラーセット : メカガール カラーセット | ボークス公式 ホビー天国オンラインストア
ABS素材にも食いつきやすい!
水性塗料であるファレホは、プラスチック以外の素材への定着性も良好かつ鮮やかに発色するので、「ABS素材を多用しているアイテム」との親和性は特に高い!
ラッカー塗料と違って下地を浸食せず割れる心配も無く、塗り直しも簡単!
ブロッカーズで言えばメカ系アイテムは大半のパーツがABSであり、FIOREも肘やボディ等の多彩な個所にABSが採用されているため、まさにファレホは打ってつけ!!
2. プロモデラー
川口名人
ウェブ上のサイトなどに発言などはありませんでしたが、twitter上で言及がありました。
twitter上での発言検索: https://mobile.twitter.com/search?q=(from%3Apikachiu_taro)%20ABS%20%E6%BA%B6%E5%89%A4&src=typed_query&f=top
https://mobile.twitter.com/pikachiu_taro/status/931798067086483456
溶剤が樹脂を劣化させて脆くするというのが基本的な原因です。これはABSに限ったことではなくPSでもあり得ることです。樹脂が溶剤に触れている時間が長ければ溶剤が樹脂に浸透し劣化を強めます。エナメル系がヤバいというのはエナメル溶剤が乾くのに時間がかかるという点も上げられます。
— 川口 克己@withコロナをわきまえてく (@pikachiu_taro) November 18, 2017
ABSに関してはエナメル系溶剤が最も影響を及ぼしますが、エナメル系に限らず基本的に溶剤を用いている限りABS樹脂は塗料の影響を受けます。どれくらい溶剤に触れているかで影響の度合いが変わってくるものと認識しています。速乾性のものであれば溶剤の影響も少ないと言えるのではないでしょうか。
— 川口 克己@withコロナをわきまえてく (@pikachiu_taro) April 16, 2018
サフを吹く場合吹き過ぎれば乾くまでに溶剤と接する時間が長くなりますし関節部などに用いられる場合が多いABSでは溶剤の浸透以上に塗膜が厚くなり可動部の摩擦が大きくなって破損するケースも多々見られますので塗装と同じ要領で吹かれた方が良いと思いますが十分にご注意された方が良いと思います。
— 川口 克己@withコロナをわきまえてく (@pikachiu_taro) April 16, 2018
ABSは特に溶剤の影響を受ける樹脂なので注意は必要です。
— 川口 克己@withコロナをわきまえてく (@pikachiu_taro) August 24, 2020
樹脂が溶剤の使用により破断するに至るには条件がありますからそれを回避すれば破断リスクは軽減されますし自分もABSパーツであっても自己責任の範囲で塗装してます。
自分はABSもPS同様に塗装します。
— 川口 克己@withコロナをわきまえてく (@pikachiu_taro) January 19, 2021
プライマーで樹脂の上に塗膜を重ねるのは破損リスクを増大させることになると認識してます。
溶剤に弱ければ厚塗りして樹脂上に溶剤がとどまる時間を減らす、速乾の塗料を使うといった対処が考えられますし可動軸に付着した塗膜は削り落とす、予め付着しないよう
鋭之介 初代 日野氏
今日さんが凄く面白い実験をしています。
— 初代 @新刊執筆中 (@cv09essex) September 21, 2019
ABSランナーにテンションを掛け、溶剤ごとの割れテストを動画にしているようです。
何かと取り沙汰されるABS、強いはずなのに割れるには理由があるんですね。#ABS割れ#初代のプラモ制覇#今日さん pic.twitter.com/I3kverFfRa
ABSはポリマーアロイとしては単体の物質ですが、混合生成物なので、曲げる、拡げるといったテンションには強いのですが、当然クラックは入ります。それがクセのある割れ方をするもので・・・#ABS割れ#初代のプラモ制覇#今日さん pic.twitter.com/dZJ9bW2UQ8
— 初代 @新刊執筆中 (@cv09essex) September 21, 2019
マイスター関田氏
このソースでの意見
- スナップフィットなどでABSに力が加わった状態で有機溶剤をかけると割れる
- 力が加わっていない状態で有機溶剤をかけて、乾いた後に力を加えても割れない
- ピンを削る・切る、穴を広げる・切れ込みを入れるなどの対策をして塗れば割れない
- プライマー・サーフェイサーを使っても防止にならない(これらも有機溶剤を含むため、塗料と本質的に変わらない)
3. その他
【ガンプラテクニック】ABS樹脂に塗装するには? | ティケノガンプラブログ
- プライマーを塗れば防げる
ABSパーツへの塗装による割れの原因と対策 | 今日の制作アトリエブログ
- 下地にサーフェイサーを吹いてから塗装するとリスク減
- エアブラシなら遠くからうっすらと何度も重ねて吹く
- いっそ組む前に塗る
まとめ
長くなったので、以上を見た僕の結論は次の記事に分けます。